太陽と恋とグラサン少女
〜7〜
「ふぅ・・・あまり良い値はつかなかったな」
ある新聞社に、俺が売れると思ったような写真を出したが、足元を見られてばかりで、
ほとんど金になるようなものはなかった。
5枚出して、合計3000円。これでは、みつきを高校に進学させることすら危うい。
明細書を何度見ても、その数字が増えることはないのにもかかわらず、見てしまう。
「これじゃあ・・・困ったなぁ」
横断歩道の前で立ち止まる。正面の歩行者信号は赤。
ぼーっと立っていると、突然右の方から車のクラクションの音が、うるさくなりはじめた。
なんだろうと思い、ふっと右を見ると・・・
目の前に、居眠り運転をしている運転手がいる、猛スピードの大型トラックが・・・
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「お父さん、お母さん。会いに来たよ」
私の目の前には、夕波まことと、夕波ひよりの2人が入っている墓がある。
線香を炊き、花を生け、墓の前で手を合わせる。
この墓は、烏丸祐一郎侯公爵からもらった烏丸家の遺産の一部を使って、私が作ったものだ。
「公爵・・・烏丸家のために使ったお金だから・・・文句は無いよね」
夕波ひより・・・私の母親は、烏丸家の分家の子孫だったのだ。
だから、私と公爵は、遠い親戚の関係にあったことになる。
通りで、公爵がしきりに、「妹に似てる。妹に似てる。」と言っていたわけだ。
「ということは、私も烏丸家の血を継いでいることになるのよねぇ・・・」
私は、持っていた茶封筒から、紙を2枚取り出す。
1枚は、お父さんからの遺書。もう1枚は・・・お母さんからの遺書。
何度か読み返したが、そこに書かれていた内容を読んで、いろんな疑問が解決した。
お母さんの存在。私の成長。お父さんのカメラ好きの理由・・・
「・・・私を産んでくれたことに、とっても感謝してる。
この世界には、たくさんの発見があるもの。
知らなかったことを知るたびに、何かが満たされていくんだけど、同時に物足りなくなるの。
写真にしてもそう。1枚撮っても、なんか足りないなって思って。
それでついつい、写真をたくさん撮っちゃうんだよね。」
誰も周りにいないのに、私は一人で、何かに話しかける。
「それで、お父さんにはかなり迷惑をかけちゃったし、何一つ、親孝行してあげられなかったけど。
でも、これから。お父さんとお母さんが私にやってほしいと思っていたことは、1つずつ・・・
少しずつだけど、やっていくつもり。それで、良いよね?」
さっ、と、優しく風が髪をなでる。
「・・・うん。それじゃあ、また来るね?」
バッグから、グラサンを1つ取り出す。
お父さんと・・・お母さんから譲り受けたグラサンを、かける。
「太陽の光が、まぶしくなってきたなぁ。・・・もう、春か。」
太陽の光を、いったいいつまで私は浴び続けることができるだろう?
この春の季節に生まれた私は、あと何年、春を迎えることができるだろう?
お父さんとお母さんのような、すばらしい恋ができるか・・・
「お父さん、お母さん・・・行ってきます」
春先の太陽の下、私は一人、歩きだしたのだった。
続く・・・?
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この小説は、「Formula」さんが執筆されている「Another World」の中に登場する、
「グラサン少女シリーズ」という架空のライトノベルを小説化したものです。
今回は、その第3作目となります。
前回より若干文字数は減って、21000文字ほどです。
途中、削れるところは削り、増やせるところは極限まで増やしました。
そのバランスが大変で大変で・・・。
一部は、前回とシンクロする部分があったりするので、そこらへんは簡単だったのですが・・・。
そんなわけで、3作目にして、視点が思いっきり変わっています。
みつきの両親の出会い、みつきと烏丸家の関係・・・など、少しずつ、伏線も回収していています。
複雑です。というかわかりにくいです。本当にごめんなさい。
しかし、まだまだ、残っている伏線はあるわけで・・・
ということは、そういうことです。4作目、作ってます。もう書き始めています。
まだ題名は決定ではありませんが「遭難事件とグラサン少女」ということになっています。
とりあえず。
余談ですが、今回の執筆場所の半分が海外(ハワイ)だったこともあり、
海岸のイメージがしやすく書きやすかったです。それだけ。
進藤リヴァイア